キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

「生きることとそのまわり」

生きることとそのまわりに自分がたいそう稀薄なのだ 朝、起きて日本語で顔を洗う湯気の立つ文法を噛み砕く 名詞、すこし味が濃い形容詞、うっかり虫歯に当たってしまった動詞、食わず嫌い 主語のないシンクに浸かっていたい浸かっていたい 生きることとその…

どうにかなる日々

冷え切ったラザニアを フォークで突き崩して 手応えのないやわさと固さに そこで満足した フェイク・プラスティック そんな顔しなさんなって、あやふやな初夏の断面 冷蔵庫になんて入らないまま なんとなくふたりで ゆっくり死んでいこうぜ ぼくの名前は嘘に…

忘れたころにかえってくるよ

腕を切らなくするのが ずいぶんとうまくなった 彼女の シャンプーの においの横でねむる ひっかき傷がふさがるくらいのあいだ 夜と朝を交換した気分で うすい耳たぶを噛んだ おもったよりしょっぱかった 懐かしい、以外どこかへ出かけていって 戸惑ってしま…

she

さみしい、のかたちに 折り重なって死んでゆく ひとりごとのなかに わたしと似た顔をみつけた タイムラインの流れにそって 点々と血が湾曲している スワイプ、画面越しの愛撫 暗がりでしか光らない祈りもある そのうち屍が増えすぎて さみしい、はずいぶん崩…

今夜のぶんだけワインを買って

今夜のぶんだけワインを買って うちへ帰りたい きみに仮借した表現でいえば 69本は余裕があるけど そういうことじゃない 点滅する光の端と端をぐっと握って 無理やりむすんでしまえるような 最後の合言葉 ほんとうに聞こえなかった 王様は星座をつくり ぼく…

夢の話

まだもうすこし 夜はねむっているから はだかのまんま語っていいとおもうんだ どんなに暗くっても 光はひかり きみの名前とおんなじ いつもの交差点のちょっとちがう側を渡ってみた なんにも変わらなかった なんにも変わらなかったけど それが それ自体がど…

白と黒

世界が止まっても ぼくらが止まっても あんまり関係ないような 気がする、けどな、今すぐ 会いに行きたいんだ 交差点と信号の動力、新京極あたりの喫茶店で いささかくたびれた顔をつきあわせてもいいじゃないか うたえどもうたえども見世物になりきれないけ…

トロンプルイユ

母国語の外へ 逃げ出したくなるときがある 意味の染みこんだ服を脱ぎ捨てて なんとなく笑っていたい それはカン違いのようであればあるほどいい ぼくの思想や肉体は貧弱でも それが白日のもとへさらされているのを 想像すると、ことばがぼくを超えてゆくのを…

遠い湖

右手と左手の親指 爪の長さがずいぶんちがった パドルを操るのにどちらがいいか知らない 触感!やわらかく腐ってゆく夏の水道水 木は黙っていてもあたたかいな 遠いあの湖へ 新宿、ほの暗い遊歩道 酔っぱらった大学生や浮浪者をよけて泳いだ ふしぎだね 7年…

午前3時の吉本隆明をぼくは忘れない

「午前3時の吉本隆明を君は忘れない」という歌詞をあなたに贈ります。笑。作曲はできません。(マキノ)— 西遊棋実行委員会 (@kansaishogi) 2017年1月23日 午前3時に凍った血が ことばの触手から逃れようとして 室外機のかげで汗をかいている ぼくもまたひと…

恋をしよう

ぼくらは解散してもヤフーニュースには載らないからちょうどいいだろ きみの目線が斜めに上がるまえに恋ができる 浮かんで沈んでふくらんだ自尊心を脅かすような強いことば、ことばがほしい飛び込んだのはぼくで、けれど流されてるのもぼくだ どうか嫌いにな…

血と水

血なんて単純な道を流れてるから つまらないな 迷いもしないし行き先をうしなったら 帰る場所しかみえないじゃないか うすめたって飲めない話がある うすめたからこそ飲めなくなったぬるい愛情 最高のパーティの端っこ 取り換えのきく飾り付けみたいな顔で笑…

テンペスト

夜があけて 生乾きの服もすこしは からだから離れてくれたかい 地球の表面をなぞりながらねむるような そんな孤独はなかなか慣れてくれない あらしのようなひとに恋をした やけにしゃべりたがる憂鬱だけ 膚を洗ってくれるが口許はひわれたまま ここにいると…

STAND ALONE

こころを叩いても 応えてくれなくなるのが怖い ぎゅっと縮んでく 懐かしい戦場の果てに夜が滲んで ぼくは詩人です 自爆しようったってまわりに誰もいない 踏める地雷も見すえる未来もぼやけたここは安全圏 変な意地張って現代詩なんてこだわるつもりじゃなか…

静かに暮らすんだ

望めばどうとでもなるようなことばかりだな 秋の小径、「きみ」とはちがうふうに呼びたかった帰り道 できるだけ呼吸を減らすため煙草で口をふさぐ ああ 無邪気な暴力を、その先にあるはずの虚無を 知りたいんだ 駅前、安っぽい油とスパイスのにおい、プライ…

かなしい夢なら見ずにすむだろう

コンビニ店員の薄ら笑いに慣れた 論外のメソッドは見ないでそっとレシートと一緒に捨てればいい 暴虐には暴虐を、揶揄には揶揄を なまぬるい独創性を描いた それでも人はそれなりに集まるもんだ 大好きな曲を再生する、頭のなか、歩く はにかんだって、かじ…

帰り道のあて

酩酊していつもさよならしてる 律儀すぎる頻度で手を振る じぶんが今、ここにいないことが不安だ 日が落ちるころから ちょっとおかしくなるのはいつものこと ぼくの棲むマンションにだんだんひとが帰ってくる ヒールの音高く、くたびれた歩調 ちぐはぐな五線…

フライングマン

息がすきとおるような夜に浮かんだ からだのバランスがおかしい あのゲームの、あのダンジョンで、あいつに毒された十字キー 高く売りつけてしまいたい情けない鬱屈、ひのひかり 名前をつけてくれたのに もう呼ばれないと知るさみしさよ 心細くていいから こ…

きれいですね

狂ってしまいたいとおもううちは まだ狂っていないから 大丈夫だ ふざけた踊りおどりつづけて なにが大丈夫だ? きみの膚は見えてる シャワー浴びすぎてカサカサだからこう言うんだ 「きれいですね」って。 誰かが思い出を棄てた ひとつ、ふたつ、みっつって…

おぼれるものは

おぼれるものは藁をもつかむというが ほんとうは 笑いをつかもうとしているのだ 最後にきみの しらけきった顔が見たい 喜劇はいつも無言のうちに幕を上げる 棺オケをワインで満たし ひびわれたパンと接吻をかわす 日曜日くらいは 休んでみたっていいだろう …

カデンツァ

血のついたベッドでねむった しばらくトマトソースは食べられなくなるな、とか とりとめもないことを考えて過ごした 体温の高いひとの隣だと 冬が嘘つきな気がする

静脈

かなしみ、みたいなものでもメシが食えたらいいな もちろんきみのじゃない ぼくのほうだ 守るつもりはないけど約束がしたい 死ぬなよとかあいしてるぜとか、そういう気持ちの貸し借り あんたやあんたやあんたじゃない「きみ」の話をしようか 十月十日もかけ…

海鳴り

最近、耳のなかに海を飼ってるみたいだ つかず離れず、ザ、ザ、さんざさざめく大きな水溜まり 気圧の乱高下 抜ける踊り場はこの先三歩上 半丁で説明つけられるなんてただの感傷です よくいえばこころが撓ってる その分多くのものを喪ってる 嘘くさいアンセム…

じぶんで答えてみる

いったいぼくはなにに怒っているんだろう あなたが死んだってそれはすでに過去の話なのに すこし経てば昔いいやつがいたって 手向けられる花としてはもう、じゅうぶんじゃないか 飾られる華やぎとしてじゅうぶんすぎるじゃないか いったいぼくは誰を殺したい…

キャンディ

どうしてあんな不細工な温度で 抱きしめてくれるんだろう 溶け残ったむなしさも舌にのせれば すこし甘い キャンディ 教えてよ、きみの名前を 思い過ごしでないならそれはことばを飛び出した ことば由来のあたたかさだ この街の夜にまだ慣れないふらついた足…

恋愛映画

茹で卵がすきとか嫌いとかで きみとぼくが離れるわけじゃないが 茹で卵の切り方ひとつで ねじれてしまう情ならあるとおもうんだ 夜が長くなったねとつぶやくと 日の暮れるのが早くなったと言う おんなじことを感じているのに 別々の場所にふれているみたいで…

わかちあえる

広告代理店があなたに 気づかないことを気づかせるならば その気づきを与えるなら ぼくは あなたが 気づいてはいてもことばにできなかった気持ちを 詩にしようとおもう 分け合おう、とおもう それはほんのちょっとずれているかもしれない 思い描いたのとちが…

浮かむ瀬

それなりにすきなひとと それなりにすてきな夜を過ごして 一日を無為に終えたと感じてしまった 話の流れにひっかかってばかりのぼくは 暗渠から夜空を見上げるふりをして 星をひとつもみつけられなかった 立つ瀬がなければ浮かべばいい、なんてただの繰り言 …

ひのひ

一度は見捨てた自分を どんな顔して拾ってやればいいか 考えていた、手のひらのうえ に乗せたようで、ずっと 手のひらのうえで 踊っているさみしげな残照 追いかける影のなまえを いつもより丁寧になぞった 口に出しても答えてくれるわけじゃないが それでも…

もの言うひと

この衣服は ほんのちょっとばかしぼくに 合っていない 幾ばくかちぐはぐに描くような落陽 おいしいオレンジの横、使い残されたイエロウ つがいのお洒落な恋人は遠いドア開くようたどる 家路のイメージ その紙幅は 本のちょっとぼやかした語法 似合っていない…