キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

静脈

かなしみ、みたいなものでもメシが食えたらいいな もちろんきみのじゃない ぼくのほうだ 守るつもりはないけど約束がしたい 死ぬなよとかあいしてるぜとか、そういう気持ちの貸し借り あんたやあんたやあんたじゃない「きみ」の話をしようか 十月十日もかけ…

海鳴り

最近、耳のなかに海を飼ってるみたいだ つかず離れず、ザ、ザ、さんざさざめく大きな水溜まり 気圧の乱高下 抜ける踊り場はこの先三歩上 半丁で説明つけられるなんてただの感傷です よくいえばこころが撓ってる その分多くのものを喪ってる 嘘くさいアンセム…

じぶんで答えてみる

いったいぼくはなにに怒っているんだろう あなたが死んだってそれはすでに過去の話なのに すこし経てば昔いいやつがいたって 手向けられる花としてはもう、じゅうぶんじゃないか 飾られる華やぎとしてじゅうぶんすぎるじゃないか いったいぼくは誰を殺したい…

キャンディ

どうしてあんな不細工な温度で 抱きしめてくれるんだろう 溶け残ったむなしさも舌にのせれば すこし甘い キャンディ 教えてよ、きみの名前を 思い過ごしでないならそれはことばを飛び出した ことば由来のあたたかさだ この街の夜にまだ慣れないふらついた足…

恋愛映画

茹で卵がすきとか嫌いとかで きみとぼくが離れるわけじゃないが 茹で卵の切り方ひとつで ねじれてしまう情ならあるとおもうんだ 夜が長くなったねとつぶやくと 日の暮れるのが早くなったと言う おんなじことを感じているのに 別々の場所にふれているみたいで…

わかちあえる

広告代理店があなたに 気づかないことを気づかせるならば その気づきを与えるなら ぼくは あなたが 気づいてはいてもことばにできなかった気持ちを 詩にしようとおもう 分け合おう、とおもう それはほんのちょっとずれているかもしれない 思い描いたのとちが…

浮かむ瀬

それなりにすきなひとと それなりにすてきな夜を過ごして 一日を無為に終えたと感じてしまった 話の流れにひっかかってばかりのぼくは 暗渠から夜空を見上げるふりをして 星をひとつもみつけられなかった 立つ瀬がなければ浮かべばいい、なんてただの繰り言 …

ひのひ

一度は見捨てた自分を どんな顔して拾ってやればいいか 考えていた、手のひらのうえ に乗せたようで、ずっと 手のひらのうえで 踊っているさみしげな残照 追いかける影のなまえを いつもより丁寧になぞった 口に出しても答えてくれるわけじゃないが それでも…

もの言うひと

この衣服は ほんのちょっとばかしぼくに 合っていない 幾ばくかちぐはぐに描くような落陽 おいしいオレンジの横、使い残されたイエロウ つがいのお洒落な恋人は遠いドア開くようたどる 家路のイメージ その紙幅は 本のちょっとぼやかした語法 似合っていない…