ただぼんやりある空
「将棋は苦し、酒は楽し、人生は哀し」とおっしゃったのは故・芹沢博文先生であったけれども、その宿痾であった十二指腸潰瘍をおなじく生涯の伴侶とさだめたぼくもまたひとりの修羅である。先生に倣って日に二升とまではいかぬが、それでも一升近い焼酎に溺れる、わたくしという現象はサウイフモノである。勇気戻れー!!(肝臓)守備しろ守備!!
と、いわゆるひとつの青い証明をしたところで、前段とまったく関係ないのだけれど、風邪をひいた。高熱の手前くらいをうろちょろしている。一度上がったらなかなか下がらないのだ。人生前残り。そして倒れる。
キャッチ・ア・コールドではあるがさりとてここで早めのパブロンでもキメると酒がのめずコールドターキーになってしまうので、冷えピタを貼り、冷蔵庫にポカリをたくわえ、鬼軍曹の精神だけなぞりつつ羽化登仙する。
たいそうひねくれた言い方をすれば、むかしから風邪とは相性がいい。千日手模様になると打開する気がなくなり「もう一番」とおもううち、どうしてだかふしぎと筆が進んだ。風の又三郎みたいなものだ。おおマレビトよ。マロウドよ。そういえば芹沢先生のお師匠は観戦記では(姓からの連想で※高柳)「又四郎」と名乗った。お弟子の先生ご自身は「鴨」だ。剣客つながりかとおもいきや鴨長明だって。方丈よりも傷んでらっしゃったのは方寸のような気がするけれど。
さて、さんざここまで引っ張った高柳系列を裏切って、加藤(治)門で締めさせていただくが、尺進あって寸退なし、ぼくは、メートルをあげさせていただこうと存ずる。
ただしフィッシュマンズふうにいえば「100ミリちょっとの」。
今もゆっくり進むのさ。
って、それ、尺に足りん。