キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

ゆめいちや

突如として秋めいてきた気配のせいか、へんな夢をみた。

 

ぼくは、おしゃれカフェを取材している。わりと若い、そう、せいぜい30代半ばくらいに見える女性がオーナー兼店長の、ウッディな内装、カウンターとテーブル席とで20名程度キャパシティのこじんまりとしたカフェだ。

パンやスイーツが有名だという。しかし、厨房のなかに入れてもらったぼくは、なぜかそのオーナー兼店長(便宜的に以後「店長」と呼ぶ)からバットを渡され、そこに焼売を16個ほど並べ、グリンピースをトッピングしろという指令を受ける。すでに成形された焼売のぼんのくぼ(と形容するとすこしちがうが)にグリンピースを埋め込んでゆく作業は想像以上にむずかしく、ふたつみっつを床に落としてしまう。店長は「ま、仕方ないね」と言って、それを「50度のオーブンで10分焼くように」と、ぼくに言ってその場をいっとき離れる。

ほんとうはオーブンに入れるとき確認するべきだったのだが、指示は「50度で10分」だから問題ないだろう、と、指示どおりに焼売を焼く(なぜ蒸すのではなく焼いているのか、なぜバットごとなのか、などに疑いはもっていない。夢だもの)。しかし、それがまちがいだった。もどってきた店長いわく「バットを置く向きがちがう」。どうやら、ぼくの置き方(長方形の長辺が手前)ではなく、短辺が手前でないといけない、というのである。

「ま、仕方ないね」店長はまたそう言ってくれたが、ぼくは泣きそうになりながら中腰のまま、茫洋とオーブンの中を見つめている。すると、うしろからすこし前かがみになった店長の紫色のセーターの胸がぼくの頭に当たった。あたたかくて、やわらかくって、すこしだけ重みのあるもの。そのうえから声が聞こえる。「口説いてくれないの?」。どういう話の流れかわからないが(だって夢だもの)ぼくは「口説かせてください」と答える。

ところがどうしてかそこで休憩に入ったらしく、それまで姿も見せなかったほかの取材クルーたち(3人もいた)が「○○、休憩いってきまーす」などと言ってわらわらと現れ、店長はどこかへいってしまった。

まだ取材は途中のようなので、焼売が焼かれていく前で、ぼくはずっとここで彼女を待っていようかと考えている。

 

そこで目がさめた。

ま、仕方ないね。