キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

ラーメン食べたい

新年あけましておメーデーメーデーこちらはミュージック現在地は2018。

相棒の歌詞をパク…パクチーしつつ華麗に登場しましたキクチです。

とっくに9日とはいうものの、松が取れるまではそれでいいじゃない。新年だもの。

 

まったく関係のない話からフェードインすると、七草粥というのがあります。あれはしみじみさわやかにうまいものです。

で、実家では前夜にですね、一族郎党うちふるって包丁やすりこぎ、火箸といった凶器を手に手に、台所に集結するわけだ。……そう、殺草事件がはじまる……。

なにしろ七草粥の下ごしらえというのは「ちょっと危ないものを持ったひとたちが無表情で歌をうたいながら野菜を殴殺、撲殺する」という悲惨な様相を帯びています。

そこでだ。金田一耕助じゃないけど、その歌がですね、キクチ、この年になるまで全国共通だとおもっていたんだ。でもどうやらそうじゃないらしいということを新聞の記事で知り、愕然。いろいろあるんだね。

 

わが家のは「唐土の鳥が日本の国に渡らぬ先に七草叩く何叩く」。

節に忠実に表記すると「とーうどーのとーりーがー、にーほーんーのーくーにーにー、わーたーらぬさーきにー、ななくさたたくなにたたく」となり、そしてめちゃくちゃマイナーコード。陰鬱。不穏。吹雪に閉ざされた山荘。途絶した外部との連絡手段。不気味なメッセージとともに量産される死体……ああん、もう。クローズド・サークル!

七草連続殴撲殺事件におけるこの歌、そう、重要なキィ・ワードなんです。また夏くらいに会ったとき、わたしは絶対忘れてますが、よかったらお宅のを教えてください。

 

さて、そんな1月7日にキクチがなにをしていたかというと、鍋してました。

正確にいえば、旧友タカハシタクマ(バンド「ステレオタイプ」のフロントマンにして元職場の先輩。余談だが実家が隣町。徒歩1分)主宰の弾き語り新年会的なものに、参加していたの。キクチ、参加していたの。

もっとも、わたしには弾き語り時の名義としてもう十何年も使っている「EADGBE」というものがある。みなさん、この謎がおわかりでしょうか。

EADGBEとはつまり、ギターのレギュラーチューニングである。「人生のチューニングを直したい」を売り文句にまったく売れない活動を全国レベルで繰り広げる被虐的なアーティスト、それがイエデグッバイ。あ、そうそう、こう表記して「イエデグッバイ」と訓みます。いまのところ、わが人生においてもっとも「どや見たか!」感のある言葉遊びなのだけれど、幸か不幸か誰もそのきらめくセンスに気づいてくれないのが悩みです(京都府・33歳・男性)。

 

当日は、8組の出演者がルーレットによって1曲ずつ歌ってゆくという、「すべらない話」形式での開催でした。うち、テレビないから知らんけど。

イエデくんは3曲歌いました。もっともそのうち2回は「★」で、つまり他薦(自薦?)なので、どれだけやりたかったんや工藤……とキクチのなかの関西人はツッコんだ。あれ、三人称と一人称が混然一体。融通無碍。和光同塵。涅槃。カート・コヴァーン。

 

ともあれ22時ごろにはよろよろと音楽部門の幕もおり、そこから本格的に新年会a.k.a鍋とあいなった。海老と鶏の鍋だった。ようだ。わたしはおつゆだけいただいて中身を確認していないのであしからず。

手持無沙汰になったキクチは、33歳風をふかせて、遊びにきていたべっぴんさん4人と、かわはらだゆうま(バンド「ツバクラメ」のフロントマン。元後輩。余談だがだいたい口が開いている。気配りの天使)、稲垣くん(名古屋のミュージシャン。5年ぶりくらいに会った)を無理やり引き込んで、聞き覚え程度のワード人狼をはじめた。

 

ワード人狼とはこうである。

2種類のお題が出され、その「仲間はずれ」を対話で探し当てるゲーム。

たとえば、6人のうち、5人には「カニ」、1人には「海老」というお題が割り振られている。多数派も少数派も自分がどちらに属しているかはスタート時点では判じ得ない。

とはいえ、原則的にお題は類義的、隣接的なことばなので、最初はおそるおそる「海産物……ですよね?」など瀬踏みから入る。

もちろん、そこで「脚は何本だっけ」といったクリティカル・ワードが出てきた瞬間、より正しくいえばその発言を聞いた場の雰囲気がとくに違和感につつまれていなければ、「海老」のプレイヤーは自分が少数派であることがわかる。逆にいえば、そのとき「えっ」という空気であれば、「海老」は多数派かもしれない。もっとも、海老にもいちおう脚はあるといえば、あるのだが。

 

こういうのを、だいたい3分タームでやる。1時間半くらい。たのしかった。

GM込で7人。

手には包丁やすりこぎのかわりにグラスやたばこだが、存分に、叩いたり叩かれたりした。言葉遊びほどおもしろいものがこの世に存在しえようか。キクチの白眉は多数派「ディズニーランド」時に少数派「USJ」を引き、途中で気づき完全にステルスして無辜の村人……じゃないや友だち、を吊った……じゃないや、疑い先に仕向けたプレイであった。ああいうことが常にできれば対面人狼でも強くなれるのにね。

 

泥酔した。

最後は終電をなくしたべっぴんさんたちに駄々をこねてラーメン。

注文しないのも何だから、と枝豆と餃子を頼んだふたりのまえで半年ぶりくらいにラーメンを啜った。随喜の涙。ギットギトの背脂が売りの店なのに背脂なしでお願いした。なんとなく、七草の日だとおぼえていたのだとおもう。あ、でも、ネギ多めで(注:ネギは五葷であって七草ではない)。うまかった。しみじみうまかった。なにをやっているんだわたしは。

 

唐土の鳥はもう、日本に渡ってきただろうか。