キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

火の日

どうも定期的に名古屋の空気を補填しないと死んでしまう身体になっていたらしい。

1月8日、吹上は鑪ら場にて、浮かむ瀬のライブ初めをしてからすこぶる体調も精神状態もよく、松田優作じゃないけど叫んでしまうよね「なんじゃこりゃあああ」。

 

浮かむ瀬 set list

1.静脈

2.踊る死体

3.目の前のつづき

4.生きることとそのまわり

5.静かに暮らすんだ

6.海鳴り

en.1219

 

いいライブができた。けれど、もっともっと自分をあっためてからやれるだろうともおもった。今回はいつもとちがって洋ちゃんが「水」で、キクチは「血」という役割分担に(結果的に)なっていたから、よけいに。

体温は36度くらいでも、血はもうちょっと熱いもんだからなあ。

「踊る死体」は舞踏家・土方巽への、「目の前のつづき」は写真家・大橋仁への、そして「生きることとそのまわり」は旧友で詩人まめちゃんへのオマージュ。わたしはいつもこんなのばっかりで、インプットとアウトプットの経路が素直だ。詩人はクリエイターではなくエディターであるという持論があるからね。オリジナリティなんて突き詰めるものじゃない。それはとことんやれば烏有に帰す。

とはいえ、アンコール「1219」ふくめ新曲4つも持って行った攻めっ気120パーセントの旭日昇天流キクチスペシャル。

これは、悪くない。いいぜ、このままいこうぜ。

 

対バンがとてもよかった。

オカリナくんは衒いのある表現にまだまだぶれを感じるけど(えらそうにごめんね)、石切場の歌はとってもよかった。センスと反射神経のいいアーティストは往々にしてことばの背骨が弱い。ただ、彼の場合、ときどきびっくりするくらい骨太なフレーズが飛び込んでくるから、わたしはすきだな。身体能力には欠けるけど、手首のしなりや指先の感覚にすぐれた技巧派ピッチャー。

ミキティに関してなにも言うことはない。できれば「ズ」(鈴木実貴子ズ)の曲も聴きたかったけれど、前夜つくったという新曲はじめ、やっぱり鈴木実貴子は鈴木実貴子でしかなくって、その不自由さが最高に自由だ。平均球速150k/mのストレートしかありません、ほどよい荒れ球です、牽制下手くそ、でもなにより走者を背負ったときのギアチェンジが半端ねえ、そういうかんじ。魅せる。魅せる。魅せる。このひととおなじ時代に生きておなじ舞台を踏めてうれしい。そうおもえる稀少な存在。自分がステージ上で覗かせる顔が、残酷なほどにうつくしいのをきみは知っているか。

白線の内側。かしやまくん(孤独部)や舟橋くん(JONNY、他)という知った面々ではあれど、初見。ポエトリー・リーディングでもラップでもポエトリー・ラップでもない、演劇的な、つまり声をただ純粋に楽器と見做したスタイル。正直、バックが上手いというより楽曲のセンスがよすぎる(2曲くらい譲ってよ、と言いました)ので、かしやまくんが延々1から70くらいまで数を数える歌とか、ポケモンの名前を連呼するだけとか、メッセージ性はきわめて稀薄なのだけど、ことばが音として配置されたふしぎな中毒感があった。あれだ、大丸ラーメンだ。ナックルボーラーだね、きみたち。ちくわ入ってる。

 

終演後、あまり体調のよくなかった村島のこともあって、最終の新幹線で帰ろうかという話をしていたのだけど、そこで登場したのがミキティ、「新しいアコギ買ったんで、弾いてもらえないすか?村島さんに触ってもらえたら御利益がありそうな気がして」。

まんまと乗っかる村島。ビールを飲み出し「いいギターやん!」そして三連符講座へ。

気がつけば終電などとっくになく、われわれは「(知ってた)」という顔をして、日付が変わる直前、ミキティ、いさみくん(つまり鈴木実貴子ズであり鑪ら場の主たち)とともに近所に最近できた焼き鳥屋へ。

彼らのすごいのは、一滴もお酒をのまないのに、こうしてつきあってくれるところだ。というか、むしろ誘ってくれたのはあちらだ。

もちろん、各地からのツアーバンドにおもてなしをしたい、という気持ちはライブハウス側として普遍的な感情なのかもしれないし(それは8年間ブッキングマネージャーをやっていたわたしもとてもよくわかる)、まして彼らが気に入らないバンドを受け入れるはずがないから、自分たちがすきなひとたちとすこしでも長く一緒にいたい、話をしたい、っていうこともあるとはおもうのだけど、それにしてもこの夜はぐっときた。

ありがとう。

 

2時前に解散。毎度のように鑪ら場に泊めてもらい、村島のすこやかなる寝息を横目に、わたしはねむれず焼酎をのみながら絵を描き続けた。くだらない同人誌みたいなものが16ページぶんくらいできた。

 

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まだここに音楽はある。

涙が体温より熱い理由を知ってるかい?

鑪ら場は、いつ来たって、とっても強い気持ちで、そうおもえるライブハウスです。