キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

夜に溺れても

春が

冬のような顔をして

滅びてはだめだ

 

おくれてきた同級生と

非常階段ですれちがうとき

ぼくらの世界線は

少しばかりずれている

きみは嘘みたいなものでできていて

そのくらいがちょうどいい

春には春の行き先があり

それ以外はそれ以外さ

 

夕暮れ、シュールで、ジュール・ヴェルヌが狂いそう

靴箱のジュヴナイルひっくり返す 大人になればすぐ会える

くたびれたヒロインと指先に白い糸

すべて間に合わなかった主人公たちが

 

夜に溺れても

ときたま吐いた血を割って

ロック、ソーダ、ジンジャー、きみは何で酔う

踊りたいか戻りたいかと問われればぼくは踊りたい

 

泡のあわいを背泳ぎで抜けてゆく

文学的修辞とはいちばん離れた場所で

グラス

割れる音

 

春が

冬のような顔をして

滅びてはだめだ

 

ぼくが

ぼく以外の顔して

滅びてはだめだ