キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

夜に溺れても

春が 冬のような顔をして 滅びてはだめだ おくれてきた同級生と 非常階段ですれちがうとき ぼくらの世界線は 少しばかりずれている きみは嘘みたいなものでできていて そのくらいがちょうどいい 春には春の行き先があり それ以外はそれ以外さ 夕暮れ、シュー…

「空き地」

暗闇でかくれんぼ知らないふりした横恋慕おおきな約束をふたりで破ろうぜ ぼくんちの郵便受けは貧弱でひとりぶんの鍵しか入っていない取り出すの今すぐ ああダイヤルをまわすようにみんな順繰りに遠くなってゆく決して会えないほどの距離じゃなくてもそれか…

「遠い時代」

飾っていた愛情は枯れて おもしろいように日々が滅びてゆく 反対方向行きの電車に乗り なにも拾わずに、眺めずに おなじ駅まで 戻ってきたい気分さ 三叉路、不安だろ あんたの判断を疑うこと ひとつもしない って決めたんだ それは信頼なんてものじゃないが …

「1219」

なるべくいろんなひとやものの 息遣いを聞いていたい 日本語の文法からはなれた脈拍、トク、トク 孤独の奥にぼくにはないお国訛り 世界よ 明日もそれなりの顔して会おう あいしているよ あいしている 砕け散ったガラスのうえで 踊れ、わたしの自由 汗をかい…

「目の前のつづき」

死んじゃうかもしれないから 家の鍵は開けておくね 「見つけて」 そんなサインを 単純に、明快に 遊びの誘いと勘違いしてしまった 音信不通、冬、ふる、えながらのクルーズ 閉じた瞼の裏側 毛細血管で埋め尽くされて 赤いな 和解がきかない若さもある いつで…

「旗を燃やせ」

旗を燃やせきみがたいせつに隠し持っていた腹の中に巻き込んだ旗を燃やせ 冬の朝、手を洗う水のひゃっこさ木綿豆腐に踊るかつぶしのチリチリした匂い射精、うつくしい死に顔と寝息コンビニ袋持ってるから、ごめん、片手しかつなげないんだ 旗を燃やせ熾火の…

「踊る死体」

なんとなく1日に1分くらいきみのことを考えている思い出さない日はないけれど10分は言い過ぎだ ベイビーフェイスもヒールもトゥ、からステップすっ飛ばされた夜にたくさんの嘘になりきれなかったことば踊り続ける死体のような記憶たち涙はうつくしくも醜くも…

「光のようね」

月明かりにぼくはどっか 持っていかれちまいそうです あなたとしたセックスのせいで まだ骨が痛いや さみしさも温かさに変わる 名前をつければすべての隙間が居場所になる 算数が苦手なので この先のことは考えてない 細い夢が糸をひいて 続いてゆくだけ う…

「人、人、人」

そのときのぼくはといえば ほんとうに手首を切ったくらいで死ねるのか試して 痛かった、ほんのちょっとした切り傷が死んでしまいそうに痛かった 流れ出したレーテン何ミリリットルの血液は 存在証明をするにはあまりにも頼りなさ過ぎて 生きたいのか死にたい…

「生きることとそのまわり」

生きることとそのまわりに自分がたいそう稀薄なのだ 朝、起きて日本語で顔を洗う湯気の立つ文法を噛み砕く 名詞、すこし味が濃い形容詞、うっかり虫歯に当たってしまった動詞、食わず嫌い 主語のないシンクに浸かっていたい浸かっていたい 生きることとその…

どうにかなる日々

冷え切ったラザニアを フォークで突き崩して 手応えのないやわさと固さに そこで満足した フェイク・プラスティック そんな顔しなさんなって、あやふやな初夏の断面 冷蔵庫になんて入らないまま なんとなくふたりで ゆっくり死んでいこうぜ ぼくの名前は嘘に…

忘れたころにかえってくるよ

腕を切らなくするのが ずいぶんとうまくなった 彼女の シャンプーの においの横でねむる ひっかき傷がふさがるくらいのあいだ 夜と朝を交換した気分で うすい耳たぶを噛んだ おもったよりしょっぱかった 懐かしい、以外どこかへ出かけていって 戸惑ってしま…

she

さみしい、のかたちに 折り重なって死んでゆく ひとりごとのなかに わたしと似た顔をみつけた タイムラインの流れにそって 点々と血が湾曲している スワイプ、画面越しの愛撫 暗がりでしか光らない祈りもある そのうち屍が増えすぎて さみしい、はずいぶん崩…

今夜のぶんだけワインを買って

今夜のぶんだけワインを買って うちへ帰りたい きみに仮借した表現でいえば 69本は余裕があるけど そういうことじゃない 点滅する光の端と端をぐっと握って 無理やりむすんでしまえるような 最後の合言葉 ほんとうに聞こえなかった 王様は星座をつくり ぼく…

夢の話

まだもうすこし 夜はねむっているから はだかのまんま語っていいとおもうんだ どんなに暗くっても 光はひかり きみの名前とおんなじ いつもの交差点のちょっとちがう側を渡ってみた なんにも変わらなかった なんにも変わらなかったけど それが それ自体がど…

白と黒

世界が止まっても ぼくらが止まっても あんまり関係ないような 気がする、けどな、今すぐ 会いに行きたいんだ 交差点と信号の動力、新京極あたりの喫茶店で いささかくたびれた顔をつきあわせてもいいじゃないか うたえどもうたえども見世物になりきれないけ…

トロンプルイユ

母国語の外へ 逃げ出したくなるときがある 意味の染みこんだ服を脱ぎ捨てて なんとなく笑っていたい それはカン違いのようであればあるほどいい ぼくの思想や肉体は貧弱でも それが白日のもとへさらされているのを 想像すると、ことばがぼくを超えてゆくのを…

遠い湖

右手と左手の親指 爪の長さがずいぶんちがった パドルを操るのにどちらがいいか知らない 触感!やわらかく腐ってゆく夏の水道水 木は黙っていてもあたたかいな 遠いあの湖へ 新宿、ほの暗い遊歩道 酔っぱらった大学生や浮浪者をよけて泳いだ ふしぎだね 7年…

午前3時の吉本隆明をぼくは忘れない

「午前3時の吉本隆明を君は忘れない」という歌詞をあなたに贈ります。笑。作曲はできません。(マキノ)— 西遊棋実行委員会 (@kansaishogi) 2017年1月23日 午前3時に凍った血が ことばの触手から逃れようとして 室外機のかげで汗をかいている ぼくもまたひと…

恋をしよう

ぼくらは解散してもヤフーニュースには載らないからちょうどいいだろ きみの目線が斜めに上がるまえに恋ができる 浮かんで沈んでふくらんだ自尊心を脅かすような強いことば、ことばがほしい飛び込んだのはぼくで、けれど流されてるのもぼくだ どうか嫌いにな…

血と水

血なんて単純な道を流れてるから つまらないな 迷いもしないし行き先をうしなったら 帰る場所しかみえないじゃないか うすめたって飲めない話がある うすめたからこそ飲めなくなったぬるい愛情 最高のパーティの端っこ 取り換えのきく飾り付けみたいな顔で笑…

テンペスト

夜があけて 生乾きの服もすこしは からだから離れてくれたかい 地球の表面をなぞりながらねむるような そんな孤独はなかなか慣れてくれない あらしのようなひとに恋をした やけにしゃべりたがる憂鬱だけ 膚を洗ってくれるが口許はひわれたまま ここにいると…

STAND ALONE

こころを叩いても 応えてくれなくなるのが怖い ぎゅっと縮んでく 懐かしい戦場の果てに夜が滲んで ぼくは詩人です 自爆しようったってまわりに誰もいない 踏める地雷も見すえる未来もぼやけたここは安全圏 変な意地張って現代詩なんてこだわるつもりじゃなか…

静かに暮らすんだ

望めばどうとでもなるようなことばかりだな 秋の小径、「きみ」とはちがうふうに呼びたかった帰り道 できるだけ呼吸を減らすため煙草で口をふさぐ ああ 無邪気な暴力を、その先にあるはずの虚無を 知りたいんだ 駅前、安っぽい油とスパイスのにおい、プライ…

かなしい夢なら見ずにすむだろう

コンビニ店員の薄ら笑いに慣れた 論外のメソッドは見ないでそっとレシートと一緒に捨てればいい 暴虐には暴虐を、揶揄には揶揄を なまぬるい独創性を描いた それでも人はそれなりに集まるもんだ 大好きな曲を再生する、頭のなか、歩く はにかんだって、かじ…

帰り道のあて

酩酊していつもさよならしてる 律儀すぎる頻度で手を振る じぶんが今、ここにいないことが不安だ 日が落ちるころから ちょっとおかしくなるのはいつものこと ぼくの棲むマンションにだんだんひとが帰ってくる ヒールの音高く、くたびれた歩調 ちぐはぐな五線…

フライングマン

息がすきとおるような夜に浮かんだ からだのバランスがおかしい あのゲームの、あのダンジョンで、あいつに毒された十字キー 高く売りつけてしまいたい情けない鬱屈、ひのひかり 名前をつけてくれたのに もう呼ばれないと知るさみしさよ 心細くていいから こ…

きれいですね

狂ってしまいたいとおもううちは まだ狂っていないから 大丈夫だ ふざけた踊りおどりつづけて なにが大丈夫だ? きみの膚は見えてる シャワー浴びすぎてカサカサだからこう言うんだ 「きれいですね」って。 誰かが思い出を棄てた ひとつ、ふたつ、みっつって…

おぼれるものは

おぼれるものは藁をもつかむというが ほんとうは 笑いをつかもうとしているのだ 最後にきみの しらけきった顔が見たい 喜劇はいつも無言のうちに幕を上げる 棺オケをワインで満たし ひびわれたパンと接吻をかわす 日曜日くらいは 休んでみたっていいだろう …

カデンツァ

血のついたベッドでねむった しばらくトマトソースは食べられなくなるな、とか とりとめもないことを考えて過ごした 体温の高いひとの隣だと 冬が嘘つきな気がする