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キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

寂しさをのせない口の端もあり

雑記

深夜にピーター・バラカンがリポーターをやっている英語(圏、ないし話者対象の)番組などみていると、てきめんに寂しくなる。おもしろうて寂しい。そこにキクチはいないからだ。いとしさとせつなさと心強さと、うれしいとたのしいと大好きと、そしてやがて悲しきタヌキである。あ、いま、てきとうなことを書きました。われながら懺悔早い。

 

「寂しい」と表記してはいるものの、ぼくのなかでは「さみしい」「さびしい」「寂しい」「淋しい」はすべて別ものでありそれぞれ色を持っていて、たとえていうなら、マックの商品という意味ではおんなじだが、テリヤキバーガーとマックポークチキンフィレオグラコロはいっしょくたにできぬではないか、というようなことである。しかし、みもふたもないがマックはなんでもおいしい。すくなくともチェーンならば他はどうでもいい。この意見を先日、家族親戚集まった席で披歴したら総スカンをくらった。きみたちには惻隠の情しかないのか。

 

さて、趣向を変えて、といえば聞こえだけはいいが、キクチはどうやら寂しさのあまりエゴサ(ーチ)活に励んでいた。もちろんそのような造語はない。市民権を得ていない、ではなくって、純粋な意味でそもそもない。

そうしたら、1年半以上前に自分がうっかりやっていたブログを発見してしまった。そして憎たらしいことにその文章がたいへんよかった。

この「キクチミョンサ的」は仮にぼくが劇的な死を遂げてもせいぜい家族のゴリ押しで私家版としてまとめられる程度が予想しうる最上の結末であろうけれど、彼、すなわち「墨酔奇譚」(という題名です)は、贔屓目を抜きに、プロの物書きとしてきびしい目でみても(連載ものとするなら)そこそこのクオリティを持している。なんでや。自律神経ぶっこわれていたのに。え?逆(手紙はここで途切れている)

 

であるからして、今後、たまにネタが切れたとき、というよりは、根性がつづかなくなった(訳:途中まで着地点を想定して書いているのだけどもうめんどくさくなった)とき、断片的にではあるけれど、そこからいくらか紹介したいとおもう(訳:きょうももうめんどくさくなった)。ただ、さすがにのっぺりコピペではアレなので、自戦解説的に最後にすこしだけ注釈を入れますね。また多少の編集を加えています。

「酒中日記」と題された、今回は記念すべきその第一回を。しかし「墨酔奇譚」とは、永井荷風(どうやら鴨川の東に住んでいるから「濹東」とかけたかったようだ)も七條兼三もびっくりである。

 

 

(2015年4月11日)

 

菊地氏(仮名)は3DKにひとり住まいである。
正確にはついこのあいだまで恋人と暮らしていたのだけれど、ウキウキ★同棲生活は1年もつづくことなくあえなく終焉となった。
恋人は帰郷し、実家の軒先には幸せの黄色いハンカチかなんかがたなびいているかもしれない。

さて、昼下がり、菊地氏(仮名)はすっかり廃墟と化したわが家でのろのろ起き出した。
嘘である。
7時くらいには起きていた。
なんの生産性もない嘘をついてしまった。
しかしながら、生産性のある嘘というやつほど厄介である。
などとぶつぶつつぶやきながら菊地氏(仮名)は昼ごはんを買うべくコンビニへ向かった。

今夜は名古屋でソロのライブがある。
菊地氏(仮名)は詩人という肩書のもと立ち話のようなパフォーマンスを行うことで知られる。
たいてい、観客は「見なくてもいいものを見てしまった」という顔をするのだが、ときおり「立ち話の伝統芸能化だね!」などと褒めそやしてくれる向きもなくはないので、依然調子に乗ったままこのような活動をつづけているのだ。


さておき、名古屋へは新幹線で行く。
つまり15時ごろまで時間をつぶさなくてはならない。
別につぶさなくったっていいのだけど、この場合はつぶすことにする。
物騒なことばかり言っているが、英語のkilling timeにくらべればまだ穏当である。
などとぶつぶつつぶやきながら菊地氏(仮名)はファミリーマートに入店した。
入店といっても「新しい子が入った」わけではない。
文字どおり店に足を踏み入れたのである。
説明しなくてもわかるか。

まず、菊地氏(仮名)が昼ごはんを買おうとおもったのにはいくつかの理由がある。
それらはどれもこれも非常に高潔かつ純粋な目的意識に彩られたものであったが、面倒くさいので割愛してひとつだけ述べると、「このままでは酒を飲んでしまいそうだったから」だ。笑わば笑え。
本を読むなりネットを漁るなり、3時間のつぶしかたにはいろいろあるものの、結局のところいずれも「酒を飲みながらできてしまう行為」である。
この陥穽をすり抜けるためには、血糖値を上げなくてはならない。
なぜなら、菊地氏(仮名)は食事をとると急激にねむたくなり、酒を飲む気どころかすべてのやる気がうせるという種類の人間であったからだ。
菊地氏(仮名)はお弁当や麺類のコーナーにするどい視線を投げかけた。

数分後、帰路につく菊地氏(仮名)の右手には、缶ビールのロング缶が3本入ったコンビニ袋がしっかりと握られていた。


いったいどうなっちゃうんだ、おれ。


今夜は名古屋でライブである。
立ち話の伝統芸能化、その未来やいかに。

 

 

【解説】

文中にある名古屋のライブは、たしか吹上の「鑪ら場」だった気がします。缶ビール(ロング)3本は新幹線の乗車時間(30分台)も鑑みれば指しすぎかとおもわれますが、現地は桟敷席もあってリハ後から開場まで横になれるという読み筋からこういった決断に至ったような感もあります。

あと、かたくなに「菊地氏(仮名)」をつらぬくあたり、ほんとうに改姓(注:わたしは2014年12月に分家しました)に対する気持ちのしこりというか、「誰だよ菊地って」という距離感が未だぬぐえなかったのだろうな、とおもいました。おしまい。