キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

じぶんで答えてみる

いったいぼくはなにに怒っているんだろう あなたが死んだってそれはすでに過去の話なのに すこし経てば昔いいやつがいたって 手向けられる花としてはもう、じゅうぶんじゃないか 飾られる華やぎとしてじゅうぶんすぎるじゃないか いったいぼくは誰を殺したい…

爆ぜる

われらが北海道日本ハムファイターズが優勝した。 これはひとえに先日のゴッドファーザー会議(友人のやがて生まれくる第二子の命名をめぐって夫妻および第一子とうちで鍋をした伝説2016である)の際、「香薫」を買おうとした彼に「シャウエッセンにしな」と…

キャンディ

どうしてあんな不細工な温度で 抱きしめてくれるんだろう 溶け残ったむなしさも舌にのせれば すこし甘い キャンディ 教えてよ、きみの名前を 思い過ごしでないならそれはことばを飛び出した ことば由来のあたたかさだ この街の夜にまだ慣れないふらついた足…

将棋雑話

ながらく将棋の家元であった大橋宗家(なんと宗桂から三代のお墓は偶然にもぼくの実家の向かいのお寺にある!)は信長、秀吉と庇護を受け、江戸時代に家康によって将棋所に任ぜられた(ここらへんは本因坊とのあれこれもあって厳密に説明するとめんどくさい…

恋愛映画

茹で卵がすきとか嫌いとかで きみとぼくが離れるわけじゃないが 茹で卵の切り方ひとつで ねじれてしまう情ならあるとおもうんだ 夜が長くなったねとつぶやくと 日の暮れるのが早くなったと言う おんなじことを感じているのに 別々の場所にふれているみたいで…

わかちあえる

広告代理店があなたに 気づかないことを気づかせるならば その気づきを与えるなら ぼくは あなたが 気づいてはいてもことばにできなかった気持ちを 詩にしようとおもう 分け合おう、とおもう それはほんのちょっとずれているかもしれない 思い描いたのとちが…

羊の木

金曜の夜。 夢日記を書き終えてぼんやり焼酎をなめていると、お客のみなみちゃんより「橋村さんの取り置きにキクチさんの名前ありますけど来ないんですか」というメール。ああああ。うかつである。橋村恭平は「京都人の”行けたら行く”は”行かない”」という民…

ゆめいちや

突如として秋めいてきた気配のせいか、へんな夢をみた。 ぼくは、おしゃれカフェを取材している。わりと若い、そう、せいぜい30代半ばくらいに見える女性がオーナー兼店長の、ウッディな内装、カウンターとテーブル席とで20名程度キャパシティのこじんまりと…

浮かむ瀬

それなりにすきなひとと それなりにすてきな夜を過ごして 一日を無為に終えたと感じてしまった 話の流れにひっかかってばかりのぼくは 暗渠から夜空を見上げるふりをして 星をひとつもみつけられなかった 立つ瀬がなければ浮かべばいい、なんてただの繰り言 …

王座戦の夜

9月20日。 王座戦第2局がおわり、ぼくは虚脱していた。天井を見上げると、木目のまにまに糸谷先生の丸まった背中がぼんやりにじんでは消えた。どうしてだ。やっぱりあのマンゴープリンが敗着だったのか。TLは羽生防衛に王手、に沸きたっていて、やり場のない…

ひのひ

一度は見捨てた自分を どんな顔して拾ってやればいいか 考えていた、手のひらのうえ に乗せたようで、ずっと 手のひらのうえで 踊っているさみしげな残照 追いかける影のなまえを いつもより丁寧になぞった 口に出しても答えてくれるわけじゃないが それでも…

花咲ける石(後編)

話がずいぶんと寄り道をしているあいだに風邪をひいた。 気分はもう檜垣是安。はたまた赤星因徹。いやそんなことを言ったらバチが当たるか。熱にうなされる頭のなかではなぜかエンドレスで「雁木でガンガーン」という自作曲が流れており、左肩にけだるげに乗…

花咲ける石(中編)

前回、「パンがすき、という棋士をきみは知っているか」としたためて擱筆したのち、キクチは街へ出た。 言うまでもなく、やけ酒のためである。 TOMOVSKYに「散歩のための散歩」という曲があるが、まさにやけ酒のためのやけ酒。なんだそれ。ああ、このまま冬…

花咲ける石(前編)

初夏にはじまった王位戦も第6局、とっくに晩夏である。 しかし巻菱湖といえば書家であり、真木よう子といえば…キクチは現実逃避することにした。すでにここまでにおける発想がオヤジギャグの三番叟だ。そして王位戦は銀波荘ではやってない。陣屋だ。あと本局…

もの言うひと

この衣服は ほんのちょっとばかしぼくに 合っていない 幾ばくかちぐはぐに描くような落陽 おいしいオレンジの横、使い残されたイエロウ つがいのお洒落な恋人は遠いドア開くようたどる 家路のイメージ その紙幅は 本のちょっとぼやかした語法 似合っていない…

マイルストーンズ

いやはや。参った。参った。「So what?」と言われちまう。ところがこいつはスパニッシュ・キーではなくってジャパニーズ・チェスの話なんだマイルス。 まあ聞いてくれ。ついさっき、日本将棋連盟のホーム・ページがリニューアルしたんだ。 王位戦第6局の1日…

ワイドボーダー

「育ちのよさ悪さ」という、たいへんやっかいな概念がある。 そもそもこの「キクチミョンサ的」(2016年9月10日時点での)ブログタイトル下の文章はSUPERCAR「PLANET」をパクッ…パクチーは緑色だからセーフ!西川セーフ!ありがとうウィーラー!みたいなパ……

寒波の汚泥のなかでいい、あるいは、「さむいな」の成分

遠く過ぎ去っていく思い出。片道切符。パワーポップ。不眠症。逃避。ポカリスエット。冷えピタ。長電話。ウィーアーインフィニティ。クサレ原稿。引きこもり。おいしい生活。地獄変。Oh、My Friend、お前は探してた。六枚のとんかつ。醜態。ウーロン茶。将棋…

しけるいかばね

気がついたら、床で寝ていた。 びっくりした。 ユカと寝ていたわけではない。念のため。ユカって誰だ。 「運転上手は床上手」ということばがある。女性の腰回りあるいはその肉を「ラブ・ハンドル」とする表現もあるので、そこから来ているのかとおもったがど…

やっぱりエゴがすき

故・芹沢先生と千日手でおもいだしたのだが、と格好をつけてこの話をはじめようとおもったのだが、泥酔酩酊のわたしのこと。そう都合よく運ぶはずはない。「だまれ、こわっぱ!」である。西村雅彦である。そして幸喜と雅彦(こういう呼び方をするひと、いま…

ただぼんやりある空

「将棋は苦し、酒は楽し、人生は哀し」とおっしゃったのは故・芹沢博文先生であったけれども、その宿痾であった十二指腸潰瘍をおなじく生涯の伴侶とさだめたぼくもまたひとりの修羅である。先生に倣って日に二升とまではいかぬが、それでも一升近い焼酎に溺…

ずれている

トンネルを抜ければそこは雪国かもしれないが、エントランスの外はただの川端通であるからして、天気予報の間隙をぬって傘をもたず家を出た。 はずなのに、てきめんにふられた。 「秋雨じゃ、濡れてまいろう」とひとりごちたら、「よっ!好色五人男!」とで…