キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

踊り場から愛をこめて

ぐるぐるぐるぐるまわった

赤錆びて骨ばったらせん階段を

ぐるぐるぐると上がった

上がってるつもりでたまに迷った

 

この人生にはいくつか踊り場があって

いま、そこでたばこふかしてるところ

遠くなったあのこの街は薄曇り

目をほそめた自分の顔はきらいだ

 

ぐるぐるぐるぐるまわって

仕事はクビになった きみのことも忘れた

四捨五入したら30歳ですね、って

バイト先の女の子に笑われた

 

車もテレビもi-phoneも持ってないから

いつも頭のなかで音楽を鳴らしてる

クリープハイプがすごくいいアルバムを出した

きみが昔いいねって言ったバンドだ

 

年下の大学生にですます調で怒られて

朝からすごくうんざりした ああもう、死にたくなった

くたびれたエプロンを脱いで裏口から逃げ出してゆく

45分の休憩時間よ永遠なれ

 

12時を過ぎたオフィス街からひとが吐き出される

男、男、女、男、若いのも年寄りも

巣をつぶされた蟻みたいにあわててどこゆくの

女、男、女、女、かわいいのもぶさいくも

ぼくは踊り場から見下ろすけど話の筋書きはわからない

彼らは逃げ出してゆくの、それとも立ち向かいにゆくの

遠い場所で起こってることは事件でもなんでもいつもそうだ

誰かが解説してやらなきゃわからないな

 

さよならを上手に言える大人になりたいとおもってる

親、友達、恋人、同僚、たくさんの好きだったひと

ぼくは生きててもしょうがないけど死んだってしょうがないや

夢、希望、収入、安定、かわいいねきみたち

いまは踊り場からみえる景色が絶対的に間違ってるなんておもえない

彼らは逃げ出してゆくよ、不安にさえ気づかずに

遠い遠い国で自爆テロが起こりました、集団自殺がありました、政治家が銃弾に倒れました、だれかとだれかが

キスをしました

 

ぼくももうすぐここを出なくちゃいけない

ビル風と砂埃と鈍い日射しのすぐ下へ

でもそのまえにもう一本だけたばこを吸わせてくれ

話は終わってないよ、でもはじまってもいなかったよ

 

踊り場から愛をこめて

踊り場から愛をこめて

 

 

 

 

 

※旧作ですが、かつて掲載していたブログを削除してしまったため、ここに留め置きます。いまそれがぼくにとって必要な気がしたので。