キャンディ
どうしてあんな不細工な温度で
抱きしめてくれるんだろう
溶け残ったむなしさも舌にのせれば
すこし甘い
キャンディ
教えてよ、きみの名前を
思い過ごしでないならそれはことばを飛び出した
ことば由来のあたたかさだ
この街の夜にまだ慣れないふらついた足取りで
フラッシュバックする思い出の横断歩道をわたる
きみのすきなおばあちゃんも永遠には生きてはいないよと言ったら
怒った、きみはたぶん百パーセントで怒った
傘のなかからはみだしてゆけ
ぼくらの未来
キャンディ
転がすとそのぶんだけやるせないような
気分がさ、ちょっと晴れるけど
キャンディ
教えてよ、きみにぼくの名前を
つけてほしかったんだほんとは
噴き出しそうなジョークでいいから
三十分もしたら宛先行方不明の手紙にまぎれて
きみはいなくなる ぼくの部屋から
知らない誰かの街へと