キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

静脈

 

 かなしみ、みたいなものでもメシが食えたらいいな

 もちろんきみのじゃない ぼくのほうだ

 

守るつもりはないけど約束がしたい

死ぬなよとかあいしてるぜとか、そういう気持ちの貸し借り

あんたやあんたやあんたじゃない「きみ」の話をしようか

十月十日もかけてこっちへ来るのに、行くとなれば一秒間

失笑や意思疎通さえかけがえがないと言えば混ぜ返してくる

狂うとはなんだ 指先のニアミスなんざ、アンダーグラウンドカルチャー

表現の奥を隠すな、ことば、晩夏、なんらかの賛歌の響く音なら

大人と呼ばれる齢になってなお、ぼくなどつれづれ、時に勝手だよ

 

 かなしみ、みたいなものでもメシが食えたらいいな

 もちろんきみのじゃない ぼくのほうだ

 

潮目が斯岸と彼岸に別れ沖へ流された錨

真夏は遠くなりにけり、まぶたの裏けぶる光と向日葵

決まり悪そうな顔にがわらい 似合わないバンド・アパート

感傷はカット 今日の京都は晴れ 夢にでもご登場あれ

 

 そうだ、きみには名前が無いな

 昔はあったかもしれないけど忘れた

 ことにしたんだろ

 

情熱、情熱、情熱 櫛比するカメラの放列に情熱はあるか

選んだ行く先、バイタルサイン 心臓に右手をあてる「異常なし」

清潔感なんかいらない けど35℃フラット 低血圧なんだ

てんでつまんない変哲もないペンで掴んだ今も来世も書いても書いても

充たされることなどないでしょう

「笑えるうち笑え、いつか泣くときがくる」

そうでなけりゃたぶん、ぼくはきっと気が狂う

 

貼られたレッテルを剥がさず帰ってゆく道の暗さを誰か皮肉るだろうか

蹴躓いたとき、「くせなんだ」嗤われるより先に嘲ってしまう

ああやってこうやって、そうやってどうこうして、結局ぼくは叩き潰される

命ほど持ち重りの感じられないものをまだ知らない

 

 「笑えるうち笑え、いつか泣くときがくる」

 そうでなけりゃたぶん、きみはきっと気が狂う