恋愛映画
茹で卵がすきとか嫌いとかで
きみとぼくが離れるわけじゃないが
茹で卵の切り方ひとつで
ねじれてしまう情ならあるとおもうんだ
夜が長くなったねとつぶやくと
日の暮れるのが早くなったと言う
おんなじことを感じているのに
別々の場所にふれているみたいで
うれしいな
きみはぼくに染まっちゃいないし
ぼくもきみのなかで死ねない
手をつなぐとすこし冷えた
ふたり以外の世界がそこにある証拠だよ
夏のおわり、街灯のあわい、ぐうの音も出ないほど愛しあいたい
理性や感情でなくって、そう、空気みたいな軽さと重さで
これは恋愛映画じゃないからモノローグもエピローグも必要ない
ただ一瞬で、ただ一瞬で終わってはじまるのさ
きみは茹で卵がすきか嫌いか知らないが
ぼくはすきだな、わりと
その先は特別なにも焦らない
いつか笑ってそんな話をしたかっただけだ