キクチミョンサ的

「なれのはて」ということばがよく似合う、ちいさなぼくのプライドだよ

匡廬便是逃名地

「革命はテレビ放送されない」とギル・スコット・ヘロンは喝破したが、べつにテレビ画面にうつらないムーヴメントすなわち革命とはかぎらない。初歩的なロジックである。そして、われわれ、含意というものをあだやおろそかに扱うわけにはいかないのだ。 「三…

フィルムとシャッター

ちょっとした遠出をした。 月日は百代の過客にしてうんぬん、というやつである。 調子にのって五言絶句のさわりらしきものをでっちあげてみた。 賢愚活風塵 骚客老酒中 そこで力尽きるキクチ。そもそも平仄ガン無視。あとちょびっと伊藤博文のパク…パクチー…

静脈

かなしみ、みたいなものでもメシが食えたらいいな もちろんきみのじゃない ぼくのほうだ 守るつもりはないけど約束がしたい 死ぬなよとかあいしてるぜとか、そういう気持ちの貸し借り あんたやあんたやあんたじゃない「きみ」の話をしようか 十月十日もかけ…

天使なんかじゃない

十二指腸か胃かわからないけれども、内臓のスクランブル交差点において、たいへんに鈍痛が盛り上がっている。祭り?ハロウィンパーティ?あらまあ、かわいいー!(ぶりっ子) ともあれ、ここ2日ちょっと、これはもうどちらかというと一揆ではなくって、本能…

海鳴り

最近、耳のなかに海を飼ってるみたいだ つかず離れず、ザ、ザ、さんざさざめく大きな水溜まり 気圧の乱高下 抜ける踊り場はこの先三歩上 半丁で説明つけられるなんてただの感傷です よくいえばこころが撓ってる その分多くのものを喪ってる 嘘くさいアンセム…

10月27日

母方の祖父が亡くなった。 と書くのはほんとうはおかしい。日本語的に。祖父はそう表現されるべきひとではなかったのだから(察しのいい方は察してください)。まあそれを言い出すと「日本語的」ってなんだよ日本語的って、という話にもなるのかもしれないが…

極楽はどこだ

ここ数日、「週刊将棋30年史」(アマプロ平手戦・対コンピュータ将棋編)をゆっくりゆっくり読んでいる。 じつにおもしろい。なにしろ、三段組で450ページ超のレンガ本であるがゆえ、そのボリュームだけでも、ぼくのような活字中毒の将棋ファンにおいては盆…

みじかい歌

どうもここ2日ほど、あたまに血がのぼっている。いくないいくない。 つとめて冷静になるべく、ファンシーな漫画を読んだり、笑える動画をみたり、アル中純粋バカオロカなりに対策を講じてはいるのだけれど、いまのところはかばかしい結果を得ることあたわず…

たまに笑ってみたり

まったくもって笑いごとではないのだけれど、22日またも病院のお世話になってしまった。読者諸兄におかれましては「まーたキクチのバカオロカ伝説のご開陳がはじまったなァ」などとおもわず、「あーブログのネタがないのね」とご理解をいただければさいわい…

河よりも長くゆるやかに

10年ほど連絡をとっていなかったひとからメールをもらった。 「生きているといいな、となんだか急におもって」と文面にはあって、そもそもいまにいたるまでメールアドレスを変えていない(自慢できることでもないが、ぼくはPCも携帯も高校時代からいちどもア…

ただいまのあとさき

どうもありがとう。 おれたち過去を生きてる。 「おれたち」が適切でなければ「おれや誰かさん」と訂正しよう。 ハローもサンキューもグッバイも実際のところぼくのことばではないから、なんとなくその響きを舌の上にころがしてたのしんだ気になっているだけ…

硝子戸の中

親ゆずりの不眠症で子どものときから損ばかりしている。 はい、坊ちゃんのオールモーニングキョウトはじまりまーす。うそです。しかしねむれぬ。 うちのばあやは清ではなく二宮といったが、二宮元気かなあ、と、ぼんやりおもい、冷静に考えたらもうだいぶ前…

ドランク・ドランク・ドランク

いやあ、びっくりした。 なにがびっくりしたって、おととい「明日は病院に行く」と書きながら、まだ行っていない。なにが悪いって、当該エントリを書いたあと、というか、その日(10月4日)はそもそも午前0時からのんでいたのだった。夕方近くなってむしょう…

酒精年代記

気がついたら、頭を四針縫っていた。 気がついたらってことはさすがにないであろう、と読者諸兄はおもわれるかもしれないが(目撃者の証言によると転倒して床で切ったらしい)、実際問題、おぼえているのは病院にてホチキスのような器具で頭をバチンバチンさ…

SS

午前中、ちょっとした手続きのため上京区へ向かった。 などというと、いかにも足をのばした体に聞こえるが、なんのことはない、ぼくの家(左京区)からは5分も歩けば、というか鴨川を渡ってしまえば、もうそこから西が上京区である。寸借詐欺的誇大広告とい…

じぶんで答えてみる

いったいぼくはなにに怒っているんだろう あなたが死んだってそれはすでに過去の話なのに すこし経てば昔いいやつがいたって 手向けられる花としてはもう、じゅうぶんじゃないか 飾られる華やぎとしてじゅうぶんすぎるじゃないか いったいぼくは誰を殺したい…

爆ぜる

われらが北海道日本ハムファイターズが優勝した。 これはひとえに先日のゴッドファーザー会議(友人のやがて生まれくる第二子の命名をめぐって夫妻および第一子とうちで鍋をした伝説2016である)の際、「香薫」を買おうとした彼に「シャウエッセンにしな」と…

キャンディ

どうしてあんな不細工な温度で 抱きしめてくれるんだろう 溶け残ったむなしさも舌にのせれば すこし甘い キャンディ 教えてよ、きみの名前を 思い過ごしでないならそれはことばを飛び出した ことば由来のあたたかさだ この街の夜にまだ慣れないふらついた足…

将棋雑話

ながらく将棋の家元であった大橋宗家(なんと宗桂から三代のお墓は偶然にもぼくの実家の向かいのお寺にある!)は信長、秀吉と庇護を受け、江戸時代に家康によって将棋所に任ぜられた(ここらへんは本因坊とのあれこれもあって厳密に説明するとめんどくさい…

恋愛映画

茹で卵がすきとか嫌いとかで きみとぼくが離れるわけじゃないが 茹で卵の切り方ひとつで ねじれてしまう情ならあるとおもうんだ 夜が長くなったねとつぶやくと 日の暮れるのが早くなったと言う おんなじことを感じているのに 別々の場所にふれているみたいで…

わかちあえる

広告代理店があなたに 気づかないことを気づかせるならば その気づきを与えるなら ぼくは あなたが 気づいてはいてもことばにできなかった気持ちを 詩にしようとおもう 分け合おう、とおもう それはほんのちょっとずれているかもしれない 思い描いたのとちが…

羊の木

金曜の夜。 夢日記を書き終えてぼんやり焼酎をなめていると、お客のみなみちゃんより「橋村さんの取り置きにキクチさんの名前ありますけど来ないんですか」というメール。ああああ。うかつである。橋村恭平は「京都人の”行けたら行く”は”行かない”」という民…

ゆめいちや

突如として秋めいてきた気配のせいか、へんな夢をみた。 ぼくは、おしゃれカフェを取材している。わりと若い、そう、せいぜい30代半ばくらいに見える女性がオーナー兼店長の、ウッディな内装、カウンターとテーブル席とで20名程度キャパシティのこじんまりと…

浮かむ瀬

それなりにすきなひとと それなりにすてきな夜を過ごして 一日を無為に終えたと感じてしまった 話の流れにひっかかってばかりのぼくは 暗渠から夜空を見上げるふりをして 星をひとつもみつけられなかった 立つ瀬がなければ浮かべばいい、なんてただの繰り言 …

王座戦の夜

9月20日。 王座戦第2局がおわり、ぼくは虚脱していた。天井を見上げると、木目のまにまに糸谷先生の丸まった背中がぼんやりにじんでは消えた。どうしてだ。やっぱりあのマンゴープリンが敗着だったのか。TLは羽生防衛に王手、に沸きたっていて、やり場のない…

ひのひ

一度は見捨てた自分を どんな顔して拾ってやればいいか 考えていた、手のひらのうえ に乗せたようで、ずっと 手のひらのうえで 踊っているさみしげな残照 追いかける影のなまえを いつもより丁寧になぞった 口に出しても答えてくれるわけじゃないが それでも…

花咲ける石(後編)

話がずいぶんと寄り道をしているあいだに風邪をひいた。 気分はもう檜垣是安。はたまた赤星因徹。いやそんなことを言ったらバチが当たるか。熱にうなされる頭のなかではなぜかエンドレスで「雁木でガンガーン」という自作曲が流れており、左肩にけだるげに乗…

花咲ける石(中編)

前回、「パンがすき、という棋士をきみは知っているか」としたためて擱筆したのち、キクチは街へ出た。 言うまでもなく、やけ酒のためである。 TOMOVSKYに「散歩のための散歩」という曲があるが、まさにやけ酒のためのやけ酒。なんだそれ。ああ、このまま冬…

花咲ける石(前編)

初夏にはじまった王位戦も第6局、とっくに晩夏である。 しかし巻菱湖といえば書家であり、真木よう子といえば…キクチは現実逃避することにした。すでにここまでにおける発想がオヤジギャグの三番叟だ。そして王位戦は銀波荘ではやってない。陣屋だ。あと本局…

もの言うひと

この衣服は ほんのちょっとばかしぼくに 合っていない 幾ばくかちぐはぐに描くような落陽 おいしいオレンジの横、使い残されたイエロウ つがいのお洒落な恋人は遠いドア開くようたどる 家路のイメージ その紙幅は 本のちょっとぼやかした語法 似合っていない…